第二種技能-13 被覆剥ぎ

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シース剥ぎの内容が長くなってしまいました.今回は被覆(以後,被覆のみは被覆,心線を含む被覆部は絶縁被覆と呼称)の剥ぎ方です.

共通の作業

被覆剥ぎもストリッパーで行いますので,持ち方などは【シース剥ぎ1】をご覧下さい.この先の説明も,殆どシース剥ぎと同様の作業説明となります.

絶縁被覆の剥ぎ取り長さの測り方

使用される工具によっては別の方法になるかも知れませんが,ストリッパー:P-958を右手に持った状態を一例として紹介しておきます.

ストリッパーの外側に,右のような目盛が来る様に持った場合,右手首を内側に返すと写真の様な状態になりますので,ここに絶縁被覆をあてがいます.

0mmの部分が内側にずれているのは,絶縁被覆を剥ぐ際に使用する刃の部分が,工具の端より約2mm右側にシフトしているからです.

慣れてくると,この印通りでピッタリなのですが,私は毎回この点線部に爪を立てて長さを測り,そのまま被覆剥ぎ操作時にも刃に爪を当てるようにして作業します.

この辺は動画で無いと説明が難しい...

被覆の剥ぎ方

被覆を剥ぐ作業は,ストリッパーの先端部分にある1.6と3個の○印,2.0と3個の○印に被覆をあてがって行いますが,絶縁被覆をストリッパーに対して前後,上下が垂直となるようにまっすぐに差し込んで下さい.ずれていると被覆が上手く剥ぎ取れません.

ここで最も大事なことですが,

  • 2.0mm径の絶縁被覆を通す場所に1.6mm径の絶縁被覆を誤って通してしまう

と,上手く剥ぎ取れないと気付くだけですが,その逆で,

  • 1.6mm径の絶縁被覆を通す場所に2.0mm径の絶縁被覆を誤って通してしまう

と,2.0mm径の心線に致命的なキズが入り,欠陥と判断されてしまいます.

この様なミスに気付いた場合はあせらずに,傷ついた心線部分を含めた絶縁被覆部を切り落とし,シース剥ぎからやり直しましょう.他の絶縁被覆部も切り揃えた方がいいでしょう.

また,意外に多いミスが1.6mm径用の挿入位置と2.0mm径用の挿入位置にまたがって絶縁被覆を差し込んで被覆剥ぎを行うケースです.

これも,2.0mm径の心線は傷ついてしまいますので,切り揃えて復旧しましょう.

絶縁被覆を通す穴では無く,1.6の3個の穴の外側に絶縁被覆をおいてしまうミスもやりがちですが,この場合は被覆にすら傷が付きませんから,この絶縁被覆だけを剥がす作業を行う事になります.慌ててよくやります.

次に,絶縁被覆を差し込んだ手元の電線部分は,強く握りしめずに軽く持つことが重要で,ストリッパーを強く握りしめて被覆を切断する際,剥ぎ取られる方の絶縁被覆が持ち上がる感触を確認するようにして下さい.

次いで,持ち上がった剥ぎ取られるべき絶縁被覆側を左手の親指でストリッパーの上から「押し下げる」動作をすると,被覆は確実に切断されます.慣れてくると,右手を右回転させる動きで左手の動きは不要となりますが,言葉では難しい・・・何れ動画で説明したいと思います.

この時点でストリッパーは不要ですので絶縁被覆から外し,絶縁被覆から切断された被覆を右手で引き抜いて下さい.切断部に親指の爪を押し込むと確実に把持できます.

この一連の動作は,多くの動画でも解説されていませんが最も確実で,素早い作業になりますので体得されることをお勧めします.

ストリッパーで切断動作をした後,左の親指でストリッパーを押し込む事で,被覆を切断.その後,被覆をストリッパーで軽く甘噛みした状態で引き剥がすと言う流れを説明されている動画を多く見ますが,慣れないうちはあまりお勧めできません.

慣れてくれば,この様な方法でも時短に有効ですので取り入れてもいいと思いますが,最初のうちは急がば回れで,確実な方法を身につけましょう.

心線上をストリッパーの被覆剥ぎのための刃が滑ることで,心線には傷が付き,刃の摩耗も早まってしまいます.絶縁被覆も弧を描いて曲がりやすくなります.

被覆を切断したままの状態でストリッパーを滑らせて被覆を抜き取るなどと言う方法は以ての外で,心線にもストリッパーの刃にも傷が入ると言う間違った方法ですので,絶対に真似をしないで下さい.

変なクセが付く前に,最初から正しい方法を身につけて下さい.

個別に注意する方法

エコケーブルの心線剥ぎ

シース剥ぎ2】でも説明しましたが,エコケーブル(EM-EEF)の被覆はポリエチレン製で非常に切断しづらい事から,左の親指でストリッパーを押すと言う動作を加えた方が引きちぎれ易いです.

しかし,あまりお勧めしませんので,ストリッパーをペンチに持ち替えて「ちぎれかけた」被覆をペンチでグリグリと回し切りするようにして下さい.この方法が確実です.

VVRの被覆剥ぎ

VVRケーブルは,VVFと違って絶縁被覆が「撚り合わさって」いますので,シースを剥いだ直後はかなり捻れています.

このままの状態で被覆剥ぎを行おうとすると,ストリッパーの刃物に上手く噛み合わない可能性があるので,先ず絶縁被覆をまっすぐに伸ばしておきましょう.

ここでしっかりと伸ばしておくことで,被覆剥ぎが楽になります.

1.6mm径の被覆剥ぎでの注意点

最後に,VVF 1.6-2C,1-6-3C 等の1.6mm径の絶縁被覆を剥ぐ際の注意点です.

P-958に代表されるようなストリッパーの構造上,先端に行くほど「開き具合が大きく,閉まり具合が小さい」事に注意してください.

こう言ったストリッパーで絶縁被覆を挟み込んだ場合,持ち手の握りが甘いと先端に行くほど「完全に閉まらない」と言う事が起こり得ます.

この結果,特に【1.6 ○○○】部分の最先端で「被覆が剥ぎ取り難い」現象が現れます.

使い込んだストリッパーほど「刃の摩耗」からか,その傾向が強いようです.

そこで,この様な現象に遭遇しないために,以下の様に対策してください.

  • 持ち手部分は一気にしっかりと握り込む習慣を付ける
  • VVC 1.6-2C の様な2心ケーブルは先端の穴(刃)を使わない様にする

そして,万が一遭遇してしまった場合は,あせらずに次のようにして下さい.

  • 絶縁被覆が剥がれなかった電線だけを,他の電線から離すように少し曲げる
    この時,他の電線は絶縁被覆がちぎれた状態(未だ剥ぎ取ってはいない)
  • 先端の○部分以外の穴でもう一度剥ぎ取り作業を行う
    この時,既に被覆がちぎれた状態の隣の電線をあてがうと寸法が揃いやすい
  • 最後に,3本(又は2本)の絶縁被覆を(爪で押さえながら抜き取るように)剥ぎ取ればOK.

この方法は,エコケーブルの絶縁被覆が剥ぎ取り難い時にも有効です.

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