昔は指定工具としてまさに使用工具を指定されていたらしいのですが,現在は以下で紹介する(JIS C 9711:1982・1990・1997 に適合する)圧着工具のみが指定されています.
にもかかわらず,電気工事士の技能試験受験者向けに,多くの企業から「指定工具セット」と銘打って販売されていて,どれもが一長一短.物によってはありえない組合せで押し売り状態というのもあったりします.またこう言うセット物は,選択肢が狭すぎますし割高な感じがします.
技能試験の対策サイトでも,堂々と未だに「電気工事士技能試験七つの指定工具」として紹介されていたりします.
くどいようですが,指定工具は「リングスリーブ用の圧着工具」のみです.試験センターの資料にもこの様に記載されています.
電動工具以外の全ての工具を使用することができます。 工具以外の物,例えば,テスタなどの計測器等の使用は禁止です。
出典:技能試験の概要と注意すべきポイント
今現在,電気工事のお仕事をされている方は大丈夫なのですが,電気工事の実務を知らずに受験される方にとっては,何が必要で何が要らないかを判断するのはほぼ不可能ですので,私の経験や先輩諸氏の意見等も交えた最小公倍数的な工具の組合せは,以下の5点で十分です.特にウォーターポンププライヤー等と言う工具は不要です.
なお,この組合せは「電気工事未経験者」を対象にしていますから,経験者の方々は自分に合った選択で構わないのは当然ですので悪しからず.
圧着工具は,最初にも書きましたが【JIS認定】のリングスリーブ用圧着工具が指定されており,持ち手(グリップ)が黄色い物を用意してください.
また,電気工事士の技能試験では「大」のリングスリーブを使いませんし,「大」まで圧着できるタイプは扱いづらい上に,実務でも使う場面は少ないと言う理由から「中」まで圧着できるタイプで十分です.
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いろんなメーカから出ていますが,以下のメーカーが無難だと思います.
ロブテックス AK17MA2 ツノダ TP-RS マーベル MH-7S ホーザン P-738
なお,技能試験判定員の方は,圧着時に正しいリングスリーブを使用し,正しく刻印されているかどうかを確認されますので,古い圧着工具を使用したために刻印がうっすらとしていたり,潰れていると「欠陥」と判断されかねません.
圧着工具は出来る限り新しい物を用意して下さい.
ワイヤーストリッパーですが,VVFタイプのシース剥ぎ,被覆剥ぎを初心者でも行いやすくした最初のメーカーであるホーザン製がおすすめで,現在の最新機種は P-958 になります.他社製も殆ど同じ形状で甲乙付けがたく,お好みでいいと思います.
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いくつか代表的なメーカの物を載せておきます.ツノダ製は持ち手が黄色ですので,圧着工具と紛らわしいため避けた方がいいと個人的には思います.
ホーザン P-958 フジ矢 FVA-1630 マーベル MVA1620
ロブテックス VA203A ツノダ VAS-230 MCC VS-4A ビクター 6200
ただ,この様なVVFストリッパーは,技能試験用と割り切った方がいい(と言いながら私は今なお使い続けていますが)と思います.実務では,通称「ガッチャン」などと呼ばれる VA線ストリッパー の方が使い易いでしょう.
こちらを技能試験に使用されてもなんら問題はありませんが,位置合わせに多少の慣れが必要です.
技能試験に合格するのが目的ですから,素人臭くてもVVFストリッパーを使いましょう.
続いてプラスドライバー.これは「2番」とか「No.2」,「+2」と表記されているものにして下さい.
出題される課題に付随しているネジ類を緩めたり締め付けたりするのですが,これより大きくても小さくてもネジを廻し難くなりますので,標準的なこのサイズにしておきましょう.私は VESSEL派ですので偏りますが,ボールグリップドライバー +2×100 を愛用しています.長さは100mmより75mmの方が扱い易いかも知れません.ただ,ボールグリップタイプは力が入り過ぎるため,メガドラ 普通ドライバー +2×100 の様な,ストレートグリップをすすめられるベテランの方も居られます.実際に私は第一種電気工事士技能試験の際,12月の試験でしたので寒かったせいか,ランプレセプタクルのネジを締める際に締めすぎて台座の一部を割ってしまいました.しかし,試験センターの欠陥の判断基準通り,欠陥とはならずに無事合格できました.
マイナスドライバーのサイズは結構重要で,必ず先端の幅が【5.5mm】の物を購入してください.私は スーパークッションドライバー -5.5×75 を用意しました.
課題で使用される埋込連用取付枠に器具を取り付ける際にマイナスドライバーの先端を差し込んで,爪を食い込ませる必要があるのですが,ドライバーの先端幅が広すぎず狭すぎずちょうどピッタリだからです.更には,スイッチ類等に挿した心線を間違いに気付いて抜く際にも,ちょうどこの幅が収まり易いんですねぇ.
なお,このマイナスドライバーの代用というか,できれば持っておきたい工具(治具)に,プレートはずしキー と言う便利なモノがあります.私も練習時,受験時共に愛用しました.
最後にペンチですが,無難なところでは長さが175mmのものがおすすめです.ただし,ホームセンターなどで安価に売られているものは避けて下さい.最低でも3mm径以上の銅線が切断できる能力は欲しいです.支点部分を偏心させてより強い力が加えられるタイプなども使い易いと思います.
この様に,ペンチの1番目の使用目的は「配線の切断」ですが,エコケーブルなどのシースが剥ぎ取り難い時等に,ペンチで掴んで引き剥がす目的でも使います.差込形コネクタでの結線をやり直す時には,ペンチがあると助かります.
また,「ぎんなん」と呼ばれる丸いくぼみを利用して,差込形コネクタに挿す心線の長さを揃えると言う使い方も便利ですので,あまり特殊なペンチやラジオペンチなどは選ばない方がいいと思います.殊,技能試験に限れば以下の様な200mm長さのタイプ,実務の事を考えると175mm長さのタイプがオススメです.
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ケイバ(KEIBA) FC-108 フジ矢(Fujiya) 3000N
VVFストリッパーでも,ある程度はペンチの代わりになりますが,より確実な作業を行うためには,是非揃えておいた方がいいと思います.
工具類ではないのですが,これらを収納する袋,バッグを用意する必要があります.
次の投稿で「便利グッズ」などを紹介しようと思いますが,それらも含め全てを収納できる袋,バッグ類になりますので,潔くリュック類かナップザック,手提げのカバン類になるかと思いますが,腰袋を持参される方も居られます.スゴイ荷物です.
私は,WORKPROの幅35cmの黒いツールバッグを買って,これ一つに全てを詰め込んで受験しました.いまは同商品は無くなっているようですが,同じメーカで33cmタイプ,40cmタイプが出ているようです.ホーザンからもいろんなタイプが出ていますので,こう言った手軽なバックで済まされるのもいいかと思います.
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