11月10日に実施された「令和5年度第一種電気工事士技能試験」の出題内容が発表されましたので,詳しく見ていくことにします.
全体の傾向
4月1日に発表された候補問題に準じて試験問題が作成されるのですが,今年も候補問題は例年通りでした.
ところが,特に今年は「器具の位置が変更になった」というケースが多かったようです.
特に電源部が入れ替わる「左右反転」は,【令和5年の第一種技能の候補問題が公表されました】でも触れましたが,候補問題が発表された時点で想定されていたことでした.
また,今まで一社独占だった変圧器代用端子台が春日電機社のTシリーズから,富士電機テクニカのAYBNシリーズに変更されたという情報も得ております.
この事で,心線長さが合わなかったなどと言うコメントもあるようですが,端子台への接続は必ず現物合わせをしてしかも,取付金具では無く端子台の縁に合わせるようにして下さい.数字を覚える必要はありません.
それでは一つずつ見ていくことにします.
候補問題が左図で,実際に出題された配線図が右図になります.
候補問題No. 1と出題内容
候補問題では下段に配置されていた15A250V接地極付埋込コンセントと3路スイッチが,上段に配置されていたランプレセプタクルと置き換わっています.これは昨年度と同じ配置となっていますので皆さん想定内だったでしょう.
接地線は「長さが50%を超えていればどちらでも構わない」のでいつも通りで大丈夫です.
それ以外は特に変更されて居らず,慌てる要素は少なかったと思います.
候補問題No. 2と出題内容
候補問題の変圧器部分と配線遮断器以降の回路がそっくり反転しています.
このようなパターンは他の課題(No. 3)にも見られましたがが,今年の特徴のようです.
位置が左右反転すると,心線の差込位置が記憶とはガラッと変わってしまうため,丸暗記されていた方は驚かれたかも知れません.
100V回路用の黒線を,変圧器代用端子台のu,vどちらに接続すべきか悩まれたと思いますが,配線遮断器のL,Nの向きに合わせれば大丈夫です.と言う事はどちらでもOKです.
日頃から,理屈を考えつつ複線図(第一種では必要です)が描けていると慌てなくて済みます.
候補問題No. 3と出題内容
昨年度は「上下が入れ替わる」という変更でしたが,今年度はアウトレットボックス位置で左右が反転されました.課題No. 2と同様,驚かれたと思います.
候補問題No. 2,3以外ではこのような変更は無かったことから,これらが出題された会場の方にはやや不利な影響が出たのでは無いかと想像します.
ただ恐らく,この候補問題No 2,3に付いては他の候補問題に比べて「やさし過ぎる」と言う判断が為されたのかも知れません.
変圧器代用端子台T1,T2の渡り線,相違いに気をつければ「やさしい」問題には違いありません.
候補問題No. 4と出題内容
今年も変更が無かった課題です.
毎年,どこで接地をするかというのを想定しますが,今年も4心ケーブルから3心ケーブルを経由して代用端子台に接続というパターンでした.
今後,同時点滅が異時点滅となることは考え難いですが,複線図は描けるように慣れておくべきと思います.
候補問題No. 5と出題内容
昨年度と同じ内容で,候補問題との差も有りませんでした.
多くの要素が含まれた問題ですので,これ以上の変更は行わない方針なのでしょう.
候補問題No. 6と出題内容
この課題も変更はありませんでした.
電流計を変圧器二次側のS相に接続するという条件も同じです.
変圧器代用端子台に接続するVVRの扱い(特に長さ)が特徴と言える課題です.
候補問題No. 7と出題内容
この課題も昨年度同様,変更はありませんでした.
電流計も例年通りT相の電流を測定するように指示されていますが,R相,S相にも対応した複線図が描けるように練習しておくべき課題だと思われます.
候補問題No. 8と出題内容
昨年度は電流計の位置がランプレセプタクルと置き換わっていましたが,今年は元に戻って候補問題通りとなりました.
電流計も例年通り変圧器二次側のv相に接続との指示も例年通りで,施工条件には変更が無かったようですので,この課題は練習有るのみですね.
候補問題No. 9と出題内容
この課題も連年通り.変更はありませんでした.
屋外灯回路の展開接続図がOR回路になるのではと言う憶測もありましたが,AND回路のままでした.
候補問題No.10と出題内容
この課題も例年通りで変更はありませんでした.
電圧計も,T相とR相間に接続するよう指示されていて昨年と同じでしたが,一昨年前はR相とS相間での接続となっていましたので,今後も変更があると考えた方が良いでしょう.
まとめ
と言う事で,出題された全課題を見てきましたが,やはり今年の目玉はと言うか大きな変更点は,候補問題No. 2とNo. 3の「左右反転」でした.
10年近く前までは当たり前でしたが,これ程の変更は最近では無かったと思います.
上下の反転は,練習時とあまり差は感じないにしても,左右反転は「高圧部と低圧部が入れ替わる」訳ですから,受験生の皆さんは驚かれたことだと思います.
しかし,毎年公開される候補問題にも,出題方法として
4.配線図に明示していないが,出題される工事種別には,ケーブル工事,金属管工事,合成樹脂管工事がある。
令和5年度第一種電気工事士技能試験候補問題の公表について
5.電源・機器・器具の配置については変更する場合がある。
6.機器・器具においては,端子台で代用するものもある。
7.接地端子付コンセントに係る接地工事及び電流計A,電圧計Vに至る工事については出題時に明記する。
と明記されて有る以上,想定しておくべき変更だったと言えます.
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