ここでは,ランプレセプタクルと露出形コンセントの単位作業を説明する前に,いわゆる【輪作り】作業について説明します.
輪作りとは
電線と器具を接続する方法で,心線が端子から抜け落ちない様にする方法の一つが【輪作り】です.
現在では先端の形状が円形やU字形や棒状の端子がよく使用されますが,それまでは殆どの器具への接続はこの【輪作り】をする方法でした.
今では,わざわざ端子部品を使わなずに済ませたい場合や,使うことでスペースが足りなくなる場合にはこの【輪作り】した部分をねじに通してねじ込む方法が採用されています.
電気工事士の技能試験では,この【輪作り】が必要な器具の接続は
- ランプレセプタクル
- 露出形コンセント
- アウトレットボックスの接地
が有ります.この後の投稿で順次説明していきますが,ここでは【輪作り】そのものの作り方について説明します.器具への接続そのものは(輪の)「巻き付けによる結線」と呼ばれるようです.
輪作りの仕方
欠陥の判断基準
【輪作り】と言っても単に「輪になっていればいい」訳ではなく,技能試験に係る「欠陥の判断基準」ではいくつかの欠陥判断基準が示されています.
- 8-3.結線部分の絶縁被覆をむき過ぎたもの
ニ.ランプレセプタクル又は露出形コンセントの結線にあっては,ねじの端から心線が 5mm以上露出したもの - 8-7.ランプレセプタクル又は露出形コンセント等の巻き付けによる結線部分の処理が適切でないもの
イ.心線の巻き付けが不足(3/4周以下),又は重ね巻きしたもの
ロ.心線を左巻きにしたもの
ハ.心線がねじの端から 5mm 以上はみ出したもの
特に【左巻き】は欠陥で,必ず右巻きにしなければなりません.
これは,ねじの締め付け方向が右回りであることから,【左巻き】にしておくとねじを締め付ける際に輪が広がる方向になってしまうからです.【右巻き】であれば,ねじを締め込む際には輪は締まっていくことになって,接続がより確かなものになります.
輪作りの手順
輪作りの作業を順を追って説明すると
- シース剥ぎ
- 絶縁被覆剥ぎ
- 輪作り
となります.
シース剥ぎや絶縁被覆剥ぎは,対象とする器具(ランプレセプタクル,露出形コンセント等)で違いますので,ここでは3.の【輪作り】だけに絞って説明したいと思います.
ストリッパーによる輪作り
今や最もポピュラーな輪作りの方法になります.この方法が確実ですので,皆さんも覚えてしまいましょう.
絶縁被覆剥ぎまでをストリッパーで行っている方であれば,そのままこのストリッパーを使う方法が工具を持ち替えたりしなくて済む分,時間短縮に加えてより確実な方法だと思われます.
1.6mm径のVVF 1.6-2C以外の電線使用例は今のところ無いようですので,同電線に限定し,操作手順は右利きを例にします.左利きの方は適宜読み替えてください.
- 黒色被覆が手前になる様に電線を左手に持つ(この意味は次の投稿で判明します)
- 絶縁被覆から1mm強離れた心線2本を同時にストリッパーの先端でしっかり掴む
- 掴んだ部分の絶縁被覆側を左人差し指で支え,左手親指をストリッパーに押しつけながらストリッパーを90度右へ直角に倒して心線を折り曲げる
- (一旦,ストリッパーを置いて)折り曲げた心線を90度のまま両側に開く
- 黒色被覆の心線の先端から約5mmの位置をストリッパーの先端でしっかり掴む
- ストリッパーをしっかり掴んだまま手前(左向き)に90度巻きこむ
- ストリッパーを持ち替えて,先程の位置より先端側に寄った部分をしっかり掴む
- 最初にストリッパーを持つ手を手の甲が内側を向くぐらいにひねっておけば,一回で巻きこめる
- 心線の先端が,最初に心線を折り曲げた部分に向かう様に加減しながら輪を作る
- 一気には上手く輪にならない場合は,少しづつ心線を掴む位置をずらしながら行うと良い
- 輪の大きさは,ストリッパー先端からどれぐらい入った位置で心線を掴むかで変わるので,相手の器具によって使い分ける(この辺は慣れが必要)
- 心線の先端が心線の根元を行き過ぎる程度に巻き込む
- 心線の根元と先端が重なる部分を1~2mm程度開く様に,先端をニッパで切断する
- 出来た輪が螺旋にならない様にストリッパーの先端で整える
- 白色被覆側も同じ様に輪作りする
- 輪が右巻きを維持する様に白と黒の電線が大きなU字形になる様に手で形を整える
ニッパが無い場合は,11.,14.で輪作りは完成させることになります.
慣れてくれば4.を飛ばして,黒,白の2本同時に輪作りすることも出来ますが,それ程の時間短縮になるわけでもないので,一本ずつ確実に行う方がいいでしょう.
ペンチによる輪作り1
ストリッパーの代わりにペンチでも,上記と同じ様に行うことは可能です.
コツは,ペンチ先端の角を上手く使うことですが,これは動画でしか説明が難しい...
ペンチによる輪作り2
次の方法は私自身は殆ど行いませんので説明も自信がありません.
しかし,この方法を説明している動画もよく見かけますので,私なりに簡単にまとめておきます.
- 黒色被覆が手前になる様に電線を左手に持つ
- 絶縁被覆から1mm強離れた心線2本を同時にペンチの幅方向でしっかり掴む
- 掴んだ部分の絶縁被覆側を左人差し指で支え,左手親指ペンチに押しつけながらペンチを90度右へ直角に倒して心線を折り曲げる
- 心線を折り曲げた状態のまま,ペンチから出ている心線に左手人差し指を当ててペンチ側に折り返す(心線がL字のクランク状になる)
- 1回目に折り返した部分にペンチをあてがい,2回目に折り返した心線の根元を切断する
この時,ペンチに刃が内側に約1mm入っているので切断代が約1mm残る - (一旦,ペンチを置いて)折り曲げた心線を90度のまま両側に開く
- ペンチ先端の角部分で絶縁被覆の心線先端に残った切断代部分をしっかり掴み,手前に巻きこむ
- 最初にペンチを持つ手を手の甲が内側を向くぐらいにひねっておけば,一回で巻きこめる
- 心線の先端が,最初に心線を折り曲げた部分に向かう様に加減しながら輪を作る
- 一気には上手く輪にならない場合は,少しづつ心線を掴む位置をずらしながら行うと良い
- 出来た輪が螺旋にならない様にペンチの先端で整える
- 白色被覆側も同じ様に輪作りする
- 輪が右巻きを維持する様に白と黒の電線が大きなU字形になる様に手で形を整える
この方法も,黒,白の2本同時に輪作りすることも出来るでしょうが,それ程の時間短縮になるわけでもないので,一本ずつ確実に行う方がいいでしょう.
なお,4.の操作で折返し易くするための長さが必要ですので,この方法の場合はシース剥ぎ,絶縁被覆剥ぎ長さが10~20mmほど多めに見込んでおく必要があります.結構無駄が多い作業になります.
昔の職人技
最後に,ネットで見かけた職人技を紹介しておきます.
- 心線を100mmぐらい長めに絶縁被覆を剥いでおく
- 端子台にねじを軽く締め込んでおく
- 心線の絶縁被覆側がねじ近くになる様に心線をねじの左に通す
- 心線の先端を掴んで,ねじに巻き付ける
- ねじを心線が動かない程度に仮締めする
- 余った心線をニッパで切断し,ねじを完全に締め込む
端子部品の無かった時代は,いくつもの輪作りが必要な器具だらけでしたから,毎回上記の様な輪作りなどやってられませんから,この様な方法で作業されていたのだと思います.
これでキレイな輪になって,しかも出来的に確実に接続され安全と言うことは,正に職人芸です.
電気工事士技能試験では電線長さが限られていますし,この様な職人芸を披露しても誰も誉めてくれません.万が一,欠陥基準に当てはまる様な事があれば一発アウトですので,止めておきましょう.
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