いよいよ要素作業の最後として,電線管の取付けについての説明になります.
電線管の種類については筆記試験で勉強されたと思いますので詳細を省き,ここでは技能試験に出題される2種類の電線管だけに絞って説明しておきます.
出題される電線管の種類
技能試験の出題範囲として,試験センターで公開されている技能試験に係る「欠陥の判断基準」によると,
・欠陥の判定は,第二部に掲載の「技能試験における欠陥の判断基準」に基づいて行います。
とされていて,その第二部に掲載されている内容そのものは,電気工事士技能試験(第一種・第二種)欠陥の判断基準の具体例を説明したものになっています.
その項目の中には電線管として
【9.金属管工事部分】 と 【10.合成樹脂製可とう電線管工事部分】
の2種類が挙げられていますので,これらが技能試験で出題される電線管になります.
金属管工事部分
金属管と言っても厚鋼管や薄鋼管,ねじなし電線管などがありますが,同じく欠陥の判断基準によると,
- 9-1.構成部品(「金属管」,「ねじなしボックスコネクタ」,「ボックス」,「ロックナット」,「絶縁ブッシング」,「ねじなし絶縁ブッシング」)が正しい位置に使用されていないもの
と書かれています.しかも,過去の課題ではE19の穴を使用する電線管のみが支給されています.
このことから,金属管として出題される電線管は【ねじなし電線管E19】という事になります.
判断基準に記載の構成部品は以下の通りです.
絶縁ブッシング
ロックナット
ねじなしボックスコネクタ
ねじなし電線管
ねじなし
絶縁ブッシング
技能試験で支給される電線管は「端面処理(バリ取り)」がされていますので問題ありませんが,練習用に購入された「器具セット」等に含まれる電線管の場合,バリが立っている場合があります.
そのまま練習に使用するとケガをし易く,コネクタにも入りづらいので,必ずヤスリ掛けなどをしておいて下さい.
この中で,ねじなし絶縁ブッシングはアウトレットボックス側から見て反対の「電線管端」に電線の引き出し用,防塵として使用される物ですが,過去の技能試験では支給されていないようです.
もし支給されたとしても,ねじなしボックスコネクタとの接続方法と同じですので,大丈夫!
以下,絶縁ブッシング,ねじなしボックスコネクタ,ねじなし電線管をそれぞれ,ブッシング,コネクタ,電線管と略記します.ボックスはアウトレットボックスを指します.
電線管とコネクタの接続
最初に行う作業は「電線管とコネクタの接続」です.
コネクタに電線管を差し込む際,奥までしっかり差し込んでください.約20mm程度押し込めれば十分です.
続いて,コネクタに附属の「止めねじ」をねじ切ります.これを行わないと
- 9-3.「ねじなし絶縁ブッシング」又は「ねじなしボックスコネクタ」の止めねじをねじ切っていないもの
に該当してしまいます.
この「ねじ切り」作業を,ネット情報や解説本では「ウォーターポンププライヤー」を使う様に勧めていますが,実務ではそのような工具を使用しませんので「ホントかなぁ」と思います.
恐らく,技能試験に係る「欠陥の判断基準」にこの様な説明があるからだと思うのですが,
D-1)金属管の接続
金属管工事では,金属管,ねじなしボックスコネクタ,ボックス,ロックナット,絶縁
ブッシングで金属管とボックスとを確実に接続することになります。
ウォータポンププライヤ等を用いて,ロックナットをしっかりと締め付けてください。
先端が+/-兼用のねじ山になっていますので,普通にドライバーを使えば簡単にねじ切れます.
あるいは,ねじ山の下が六角にもなっていますのでM5用の口幅8mmのスパナ,ラチェットレンチなどでもねじ切れますし,この部分を掴むことでペンチなどでも可能です.
実務では主にラチェットレンチを使いますが,技能試験に限れば電線管が約100mmと短いので,私はペンチをお勧めします.
ペンチで止めネジの先端を掴み,電線管をぐるっと一廻り回転すればポロッと取れてくれるので楽ちんで確実です.
この作業のためだけにウォーターポンププライヤーを持ち込むのは止めておきましょう.
ねじ切った後でも上図にある様に「つかみ代」がギザギザになっていますので,この部分をペンチで掴んで廻せば,コネクタを外す事が出来ます.
試験練習をされる時は,この様にしてねじの取外しを行って,新しい止めねじで再び接続練習をする事が出来ます.
コネクタとボックスの接続
指定されたE19用の穴に,先程作業したコネクタと電線管のセットを差し込みます.
この時,コネクタに最初からセットされている「ロックナット」を外しておく必要がありますが,ロックナットには向きがあるので注意してください.
お椀型の「凹面」側でボックスとコネクタを挟む様にして取り付けます.
この凹面のバネ効果により,ロックナットがしっかり締め付けられる事になります.
技能試験に係る「欠陥の判断基準」に,ロックナットの向きについての記述が有りませんので向きを間違えても欠陥にはなりませんが,金属管が外れやすくなる危険がありますので正しい向きで取り付けましょう.
またここでも「ウォーターポンププライヤーを使いましょう」と言う説明をよく見聞きしますが,コネクタ側の止めネジ部分が上に向く少し手前にした状態でロックナットを手で回し,このロックナットを摘まんだままコネクタを上に向くまで廻し込めば,十分に固定できます.
ウォーターポンププライヤーで廻そうとすると,狭いが故に却ってしっかり廻せませんし,ロックナットを傷める場合もあり得ます.
技能試験に係る「欠陥の判断基準」では,こう書かれています.
- 9-2.構成部品間の接続が適切でないもの
イ.「管」を引っ張って外れるもの
ロ.「絶縁ブッシング」が外れているもの
ハ.「管」と「ボックス」との接続部分を目視して隙間があるもの
つまり,「引っ張って外れなければOK」と言う事です.
次に,ブッシングをねじ込みますが,先程のロックナット同様,手で締め付けるだけで十分です.
「ブッシングが外れなければOK」なのです.
決してウォーターポンププライヤーでねじ込もうとしないでください.割れてしまいます.
ボンド線の処理
最近は,ボンド線の施工処理は試験されないようですが,2021年の筆記試験にも登場しており,簡単な作業だけにいつ復活するか判りませんので,ここで説明しておきます.
技能試験に係る「欠陥の判断基準」では次の判断基準が該当します.
- 9-4.ボンド工事を行っていない又は施工条件に相違してボンド線以外の電線で結線したもの
- 9-6.ボンド線のねじなしボックスコネクタの接地用端子への取り付けが適切でないもの
イ.ボンド線をねじで締め付けていないもの
ロ.ボンド線が他端から出ていないもの
ハ.ボンド線を正しい位置以外に取り付けたもの
9-4.は論外として,9-6.はミスのない様に作業しましょう.
先ずボンド線ですが,ここで使用するのは「アースボンド」と呼ばれるもので,通常は端子付のIV線などになります.技能試験では,1.6mm径のIV線の心線だけを取りだしたものです.裸電線とも呼ばれますが,要は単なる銅線です.
このボンド線の一方に輪作りを施しますが,対象となる止めねじはM4と小さいため,ランプレセプタクルなどの時の様な輪作りでは無く,やや小さめになります.このねじは支給部品に含まれます.
最初の折返しを15mm程度にして輪作りすれば大丈夫です.ねじにツバが付いているので,ある程度大きくても隠れてくれます.
しかし,止めねじでねじ込む際は「のの字」の向きに注意してください.やはり「右巻き」です.
アウトレットボックス内で,止めねじを取り付けるねじ穴は一箇所しかありませんので,その箇所にねじ止めしたボンド線をアウトレットの底に明いた適当な穴から下に通します.
底を通したボンド線を再びコネクタの近くに廻し込んで,しっかり引き寄せてからコネクタ上の「接地用端子」に差し込んでねじ止めします.
この時,接地用端子からボンド線の先端が出ていることが大事です.下の写真は技能試験に係る「欠陥の判断基準」からの抜粋ですが,接地用端子の形状によってボンド線を差し込む位置が違いますので注意が必要です.
ねじなし電線管の取付けについての説明は以上です.
長くなりましたので,合成樹脂製可とう電線管工事部分については次回の記事で説明させて戴きます..
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